一部の相続人が相続放棄をした時、債務の負担はどうなりますか?
一部の相続人が相続放棄したら、債務の負担はどうなるの?
被相続人が生前に作った負の財産(借金)がたくさんある場合は、相続放棄をすることで、債務の負担から逃れることができます。しかし相続放棄の仕組みをよく知らない相続人の中には、「自分が相続放棄をしたら、他の相続人や家族に迷惑がかかるんじゃないか?」と感じる方々もいるようです。今回は、故人の借金によって遺産相続手続きに不安や悩みを抱える皆さんと一緒に、相続放棄と債務の負担について考えていきます。
一般的な遺産相続と債務の負担
例えば、夫、妻、長男、長女という4人がいる家族の中で旦那さんが亡くなり、プラスの財産とマイナスの財産とも言える借金が残ったとします。この家庭で全員が遺産相続をする場合は、妻が2分の1、長男と長女が4分の1ずつ借金を引き継ぐ形となるのです。
このケースでは遺産分割協議書の中で、それぞれの引き継ぎ分が記載される形となります。しかし債権者側にはこのルールに従う義務はありませんので、家族の代表とも言える妻や子供のどちらかに窓口的な意味で債務の請求がくる形が一般的となります。
長男が相続放棄をした場合
この家庭の中で長男が相続放棄をした場合は、「最初から相続人は妻と娘の2人だった」という考え方となります。そのため、本来は4分の1の相続で良いはずの娘は、妻と同じ2分の1の債務を負担する形となるのです。これに対して長男・長女が2人とも相続放棄をする決断をした場合は、唯一の法定相続人である妻だけが夫の借金の支払いをする流れとなります。
相続人全員が相続放棄をしてしまった場合は?
亡くなった被相続人の借金があまりにも多く、「どんなに頑張っても支払えない!」といったレベルの場合は、法定相続人である妻・長男・長女の全てが相続放棄をすることも可能です。しかし相続放棄を行うと、旦那さん名義で建てた住宅などの不動産も遺産相続できなくなりますので、プラスの遺産に手放せない対象がある場合は、じっくり考えてから手続きを進めるべきだと言えそうです。
まとめ
被相続人が作った借金や連帯保証人に対する相続放棄は、相続開始から3ヶ月以内に行う必要のある手続きです。葬儀や四十九日法要といったさまざまなことを行わなければならないこの3ヶ月間は、多くの相続人に冷静な対応ができなくなるケースが多く見受けられますので、相続手続きで判断ができない事象がひとつでもある場合は、早めに弁護士にサポートをお願いするのが理想と言えるでしょう。