遺言の内容は相続放棄できますか?
特定遺贈の放棄
土地や自動車といった具体的な相続財産が遺言の内容に記載されていることを、特定遺贈と呼びます。
受遺者がこの財産を放棄する場合は、他の相続人もしくは遺言執行者に意思表示するだけで放棄可能となります。
民法第986条では特定遺贈の放棄は遺言者の死後いつでも可能と定めており、また放棄後は遺言者の死亡時に訴求して効力を生じさせられるとしています。
包括遺贈の放棄
「相続財産の3分の1」とか「相続財産の50%」といった形で相続割合が指定される包括遺贈の場合は、受遺者は法定相続人と同じ権利を持つことが可能となります。
その為、マイナスの遺産があまりにも多いといった理由で包括遺贈の放棄をする場合は、法定相続人の相続放棄と同じように受遺者である事実を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所への申し立てをしなければなりません。
相続放棄された財産はどうなるの?
遺言書で指定された人が遺贈の放棄を行なった場合、引き継ぐはずとされていた財産は相続財産の対象となる仕組みです。
その為、相続放棄が行われた後は、法定相続人の間で遺産分割の対象になると捉えてください。
遺贈の放棄と相続放棄の違い
遺言書の中で多くの財産が受け取れる指定がされていた受遺者が法定相続人でもあった場合は、「遺贈の放棄」だけでなく「相続権の放棄」についても考えなければなりません。
例えば、「財産の50%」と包括遺贈を記載した被相続人に多くのマイナスの財産があった場合、受遺者はまず包括遺贈の放棄の申述をすることで、全財産の半分を引き継ぐ状況から逃れられます。
しかしその受遺者が法定相続人でもあった場合は、申述後に他の相続人とともに遺産分割協議を行う必要が出てくるため、この部分からも逃れる場合は相続権の放棄の申し立ても家庭裁判所で行う必要がでてくるのです。
単純承認についても注意が必要
遺言書の内容だけでなく相続放棄全般に共通する注意点は、被相続人の私物などを勝手に処分することで生じる単純承認です。
被相続人の預貯金を勝手に使ったり、それなりに価値ある財産の売却などを行うと、債権者から「遺産相続を行う意思がある」と判断されて相続放棄ができなくなることもあります。
しかし実際は賃貸住宅や駐車場の明け渡しといった理由で早めに遺品整理を行うべき事例も多く存在しますので、相続放棄前に被相続人の財産を動かす必要性に迫られている場合は早めに相続問題を得意とする弁護士に相談をした方が良いでしょう。